今日、熱性けいれんのお子さんが入院してきました。
熱性けいれん2回目で、初回の際にダイアップを処方されていたのに、使うのが怖いからと発熱時に使用せず、最低30分間、痙攣が継続してしまった子でした。
私はこの子のカルテ見て、お母さまと話して、衝撃を受けました。
ダイアップの必要性が分かられてなかったのかと。
「ダイアップが出されている子は必要あって出されている」
詳しく言うと、
その子のけいれん再発リスクが高い=脳の損傷リスクがあるからダイアップが処方されています。
詳しく話していきますね。
目次
そもそも熱性けいれんって何?
そもそも、熱性けいれんってどんな病気なんでしょうか?
熱性けいれんガイドラインによる定義は上記なんですが、分かりにくいですよね。意訳すると、「6か月~5歳までに起こる」「何か原因がない(除外診断)」「熱により引き起こされるけいれん」の事です。
小さい子供では発熱によって脳の神経が異常に興奮してしまい、それが痙攣となって現れます。特に脳の神経が発達している時に多く、6か月~5歳の間でよく起こります。
日本での有病率は20人~30人に1人とかなり多いです。
治療方法
まず、痙攣が起こっている場合、それを鎮静させる(痙攣をとめる)必要があります。
痙攣をなるべく早く止める必要があるんですか?
30分以上の痙攣で脳が傷つくリスクが上昇するからだよ!
なぜ、痙攣をなるべく早く止める必要があるのか。それは、30分以上の痙攣で脳への器質的な損傷の可能性が上がるからです。具体的に言うと、30分以上痙攣している場合、後遺症(言語障害や発達障害など)が出る可能性が上がります。大体、救急車で運ばれている時点ですでに30分を超えることが多いです。なので、受診時、痙攣がある場合、まず鎮静!となります。
使われるお薬はミダゾラムが多いですが、ホスフェニトインや抗てんかん薬が使われることもあります。使用の際は添付文書で処方が正しいことをしっかり確認しましょう。
鎮静後、痙攣が収まれば、経過観察、必要な時は入院して経過観察となります。
熱性けいれんの予後
熱性けいれんの予後は良いと言われています。
熱性けいれんの予後が良いってどういうことですか?
①てんかんに進展・移行しない ②再発率がひくい ということだよ!
「熱性けいれんの予後は良い」と良く聞きます。この言葉を聞いたときに、熱性けいれんの予後って何だろうと思いました。癌なら、生き残る確率かなとかなるんですが(5年生存率など)、熱性けいれんで死ぬみたいな話は聞いたことがないし、よく分からないと…
熱性けいれんの場合の予後が良いという意味は、①てんかんに進展・移行しない②再発率が低いということです。それぞれ説明していきます。
熱性けいれんはてんかんに進展・移行しない
熱性けいれんの90%以上がてんかんを発症しません。
上の図はガイドラインのデータを表にして分かりやすくまとめた物です。一般の人がてんかん発症率は0.5~1.0%ですが、熱性けいれん患者のてんかん発作因子がない人の場合も1.0%と同じであることが分かります。
てんかん発作因子がある場合でてんかん発症率は2.0%~10%です。てんかんと診断を受けてなくて、熱性けいれんを期に転換と分かる事はありますので、その結果、てんかん発作因子が多い場合はてんかん発作率が高いという見方もできると思います。
ただ、データ全体としても、熱性けいれんを起こした患者の内90%以上はてんかんを発症しない。てんかんに進展・移行しないといえます。
再発率が低い
熱性けいれんは再発率が低いです。
上のグラフは再発危険因子のない患者の再発率と再発危険因子のある患者の再発率を表したグラフです。熱性けいれんガイドライン上のデータを分かりやすくグラフにしました。
再発危険因子のない患者の場合、再発率は85%、再発しない確立は15%です。対して再発経験因子のある患者では、再発率は30%、再発しない確立は70%です。再発危険因子がある患者でも、再発率は30%しかなく、70%は再発しない事が分かります。
ただ、再発危険因子のある患者では、3人に1人が再発するのも事実。なので、再発危険因子のある患者に痙攣を予防するためにダイアップ(ジアゼパム)を使用していきます。逆に再発危険因子のない患者には基本的に使用しません。
ダイアップ(ジアゼパム)を使用するということは、再発リスクが通常の人より高いということを指導の時に知った上で指導してください。
ダイアップ(ジアゼパム)が処方される人は限られてるんだね。
再発危険因子とは
ちょっと脱線しますが、再発危険因子とはなにか、という話をします。文字のごとく、熱性けいれん再発の危険がある因子のことです。以下の7つです。
①15分以上持続する発作あり
②焦点性発作(部分発作)の要素あり
③一発熱機械内の、通常は24時間以内に複数回反復する発作
④熱性けいれん前の神経移乗・成長遅延
⑤12か月未満
⑥発熱1時間未満、38度未満での発症
⑦家族歴がある
ちなみに、熱性けいれんは単純型と複雑型に分れるのですが、①~③の項目に該当するものは複雑型とされています。再発率の話をしたときにも述べたように上記の因子がある患者には、ダイアップの予防的使用が推奨されてきます。
痙攣予防にダイアップ(使用方法)
ダイアップ(ジアゼパム)坐剤を熱性けいれん予防に使用します。
発作の時じゃなくて、予防に使うんですね
ダイアップ(ジアゼパム)は効くまでに20-30分かかるから、発作が起きた後に使っても遅いんだ!(痙攣を押さえるには量も少ないよ)
使用方法に関して、「発熱時に1個使用する」「その後8時間後も発熱していた場合は使用する」ことが多いですが、体温が何度で使用するか、8時間後は発熱しなくても使用するなど医師により使用方法はバリエーションがあります。
患者と医師との信頼関係を保つためにも、「どのように使用するか先生から聞いていますか?」と使用方法に関して、こちらから説明するよりも確認して聞いた方が良いと思います。
副作用に関して
ダイアップの副作用の興奮はなぜ起こるんですか?
脳の興奮を少しだけ抑えているから。お酒をイメージすると分かりやすいよ!
副作用に関して、ダイアップ(ジアゼパム)には、「呼吸抑制」「眠気」「ふらつき」のほかに「興奮」もあります。これはなぜか。
お酒を飲んだ時をイメージしてもらえたらと思うのですが、お酒を少し飲んだ時って、気分が良くなりますよね。そう、興奮するんです。ダイアップ(ジアゼパム)の副作用:興奮の具体例としては、スリッパを投げてくる子、頭を壁にぶつける子、走り回ったお子さんもいました
お酒をどんどん飲んでいくと、ふらふらになって、眠気もきて、最終的にはアルコール中毒だと意識不明・呼吸抑制になりますよね。ダイアップ(ジアゼパム)でも効きすぎるとそのような症状が出るかもしれないので、使用の際は注意が必要になります。
ただ、副作用を強調すると、ダイアップ(ジアゼパム)を必要なのに使用しないということが起こり得るので、しっかりダイアップの意義を説明したうえで、怖がらせない分かりやすい副作用をしていきましょう。
まとめ
今回は熱性けいれんとダイアップ(ジアゼパム)について話しました。始めて聞く話や再確認した知識が多かったのではないでしょうか。
一人でも多くの患者さんが薬への不安を解消し、安心して正しい使い方ができるようになりますように願っております。
参考:熱性けいれん診療ガイドライン2015
https://www.childneuro.jp/modules/about/index.php?content_id=33
今回は熱性けいれんの話をしていくよ!