ある日、先輩の薬剤師から、高齢者にはナウゼリンの方が良いという話を聞きました。その時はそうなんですねと流したのですが、理由が気になり、調べたので、そのお話をしたいと思います!
今回、ナウゼリン(ドンペリドン)とプリンペラン(メトクロプラミド)について学びました!
結論:
①お年寄りにはナウゼリン(副作用の面から)
②若い女性にはプリンペラン(妊娠時禁忌の面から)
目次
ナウゼリンとプリンペランとは?
ナウゼリン(成分名:ドンペリドン)とプリンペラン(成分名:メトクロプラミド)は制吐剤です。どちらも作用機序は同じドパミン2受容体拮抗薬です。
使用実績はプリンペランの方が豊富
プリンペラン(メトクロプラミド)は1965年10月に販売を開始、対してナウゼリン(ドンペリドン)は1982年 9月に販売開始と、プリンペランの方が昔から使われています。そのため、プリンペラン(メトクロプラミド)の方が使用実績が多いです。
妊娠・授乳に関して
ナウゼリン(ドンペリドン)に関して、添付文書の禁忌の欄に「妊婦又は妊娠している可能性のある女性」とあります。理由としては、動物実験のデータにはなりますが、内臓異常の催奇形性作用が認められたからです。
ただし、産婦人科診療ガイドライン2020によると、「妊娠初期のみに使用された場合、胎児への影響はない」とされています。これは、妊娠に気付かぬうちに使用もしくはたまたま使ってしまった場合のエビデンスがないからです。気付いたタイミングで主治医に相談するのがベストです。
悪阻の場合、吐くことは悪いことではない(異物を排除する自然現象)です。ただ、吐くというのは、思いのほか体力を使いますし、キツイです。妊娠していると分かって、吐き気止めを使用する場合は、プリンペラン(メトクロプラミド)の方が良いと考えられます。若い女性でナウゼリンが出たときは注意しておきましょう。
若い女性にはむしろプリンペランの方が良いかもですね!
効果に違いはない
ナウゼリン(ドンペリドン)とプリンペラン(メトクロプラミド)で効果の違いはありません。
これは、1991年に発表された論文からきています。
メトクロプラミド15㎎を1日2回した群とドンペリドン10mgもしくは20㎎を1日3回使用した群とで、効果・副作用共に差はなかったという結果です。
したがって、どちらも効果は一緒と言われています。
脳への移行性は
脳への移行性はプリンペラン(メトクロプラミド)の方が高いです。
そもそも、私達の脳は全身から流れてくる血を血液脳関門というフィルターで選りすぐっています。有害な物が脳に入ると危険だからです。逆にアミノ酸やグルコースなど必要な栄養素はしっかり通ります。
プリンペラン(メトクロプラミド)には、ベンズアミド基を持っており、そのため、血液脳関門を通過しやすくなっています。ナウゼリン(ドンペリドン)には含まれてないため、比較して血液脳関門の障害を受けやすい=脳に移行しにくい制吐剤と言えます。
高齢者の場合、肝臓での代謝も下がっていますから、脳へ移行する薬剤量も多くなり、錐体外路症状(歩行困難・振戦など)もひどくなる可能性があります。したがって、脳へ移行しにくいナウゼリンの方が高齢者にはより良いと考えれます。
ナウゼリンは脳に移行しにくい中枢系の副作用も起こりにくくなるんだね!
まとめ
今回、ナウゼリン(ドンペリドン)とプリンペラン(メトクロプラミド)について学びました!
結論、
①お年寄りにはナウゼリン
②若い女性にはプリンペラン
今回調べてみてとても勉強になったので、また他の薬剤でも調べたり、まとめたりしてみたいと思います。
薬剤師 田中
参考文献:
「A comparison of controlled release metoclopramide and domperidone in the treatment of nausea and vomiting」→https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/1810356/
参考サイト:産婦人科診療ガイドライン2020→ https://www.jsog.or.jp/activity/pdf/gl_sanka_2020.pdf
ナウゼリンの方が高齢者に使いやすいよ!